2013年8月21日水曜日

峠の釜めし便り 〜初めてのおぎのや本店

たびたび当ブログで紹介している「峠の釜めし本舗おぎのや」だが、先日の日曜日、ついに横川駅前の本店へお邪魔してきた。

元祖峠の釜めしおぎのや本店


愛しすぎて「峠の釜めし便り」カテゴリ、作りました


「アプトの道」を行く前に腹ごしらえをした際に寄ったので、アプトの道の紹介をメインにした記事の中で触れようと思ったのだが、釜めしへの思い入れが強すぎるため、あえて単独の記事で紹介しようと思う。

アプトの道ハイキング編はまた次回


ついでにおぎのやにはあまりにひんぱんに通いすぎているので、「峠の釜めし便り」というラベルを作成した。
そんなわけで以後も群馬名物No.1駅弁「峠の釜めし」をよろしくお願いします。

■関連記事





レトロチックな信越本線・横川駅。目の前に迫っているのは妙義山

本店は古き良き定食屋風


2013年8月18日、日曜日。
お盆休みの最終日の信越本線横川駅はそこそこの混み具合だった。
東京からやってきた友だち(赤城山を一緒に登った山ガール)との連絡の行き違いから、予定していたより1時間ほど遅れて横川駅に降り立ったのは午前11時ごろだった。

横川駅改札から反対側にある国道18号に面したおぎのやドライブイン店で待ち合わせしようとしたがうまく伝わらず、友だちからは、横川駅の改札を出たすぐのおぎのや本店で待機しているとのメールが来た。
ドライブイン店(横川店)だと駅からは少し歩くが、土産物やカフェスペースが充実しているので時間をつぶしやすかろうと思って待ち合わせ場所に提案したのだった。
だが本店の店員さんが、「待ち合わせのお友達が来てからの注文で全然いいですよ」と親切にしてくれて、多少長居しても大丈夫そうな雰囲気だったそうだ。
とはいえ私が店に入った当初は私たち二人と先客一人だったので長居しても迷惑はかからなそうだったが、食事を終えて出る11時半すぎごろには店内は満員になっていたので、時間帯によっては長居は禁物だと思う。


 おぎのや創業明治18年。明治26年竣工のめがね橋より先輩 
おぎのや創業明治18年。明治26年竣工のめがね橋より先輩。


本店は日本家屋のような造りをした和風の店舗で、店内は古き良き町の定食屋といった雰囲気だった。
レストランスペースが広く取られたドライブイン店と比べると、いわゆる定食屋という感じなので、どんなに店員さんが親切にしてくれても、やはり度を越した長居はしにくいと思う。
メニューには定番の峠の釜めしのほかに、うどんやそば、丼ものなどがあった。
飲み物はビールやワンカップ、チューハイなどのアルコール類、コーラやアイスコーヒーなどのソフトドリンク、ほかに釜めしに並ぶらしい碓氷峠名物「峠の力餅」などのデザートも食べられるようだった。


食欲減退気味の猛暑でも、釜めしだけは完食




 この日は峠の釜めしとお味噌汁のセットを注文。
去年は900円でお味噌汁つき。今年は峠の釜めし単品1,000円で、お味噌汁つきだと1,150円に値上がりしてしまったのが少しだけ悲しい。

避暑地・軽井沢にも近い横川とはいえ、この日も30℃越えした猛暑だったので、食欲も少々減退気味だった。
しかし旨いものには勝てない。
ボリューム満点の釜めしとお味噌汁、しっかり完食いたしました。
(ただし甘味の杏と栗は友だちにあげて、椎茸一枚とトレード)

アプトの道ハイキングの団体旅行者には、昼食時に碓氷湖でこの峠の釜めしが配られるという話を聞く。
個人のハイカーが碓氷湖でこの弁当を食べるのにはどうすればいいのだろうか。
ザックの中に入れて運ぶのにこのお釜は重すぎるな……
そんなことを想像しながら店内のテレビを見ると高校野球の中継真っ最中で、我らが前橋育英高校がいまだ善戦していることを知って驚愕した。
(本日8月21日時点で準決勝進出が決定している)

食事を終え、入店前にちらっと見てから気になっていた本店向かいにある「おぎのや資料館」へ入る。



 


峠の釜めし容器のできるまで。
益子焼のあの容器の秘密などが展示してあった。
しかし資料館に入ってからものの1分もしないうちに、駅方面から蒸気機関車の蒸気音のようなものが聞こえたので、気もそぞろになり、急いで駅方面に向かうことにしたのであった。おわり。



2013年8月15日木曜日

前略、アプトの道の上より

前略、アプトの道の上より


あの日から空への憧れが止まらない。

絶賛公開中の大人向けジブリ映画「風立ちぬ」を観てからというもの、ふとした瞬間に「ひこうき雲」のメインフレーズ「空に〜 憧れて〜♪」が頭の中をかけめぐる毎日をすごしている。

ひこうき雲 - ひこうき雲 - Single

「風立ちぬ」で碓氷峠(うすいとうげ)に思いを馳せまくる

「風立ちぬ」は関東大震災からの復興目ざましい東京を中心に、主人公・堀越二郎の勤め先である三菱重工がある名古屋や、牛が航空機を運んで行く飛行場がある岐阜県各務原、視察先のドイツ、ヒロイン・奈穂子と再会する休養先の軽井沢、奈穂子が療養する富士見高原などなど、様々な土地が舞台となっている。

そんななかでも群馬県民的にはとくに休養先の軽井沢へ至る前に列車が通り過ぎてゆく、我らが碓氷峠の様子が頭から離れない。


 ポッポタウンのトロッコ列車シェルパくんと妙義山のコラボ

映画の中の舞台をめぐりたくなったのは、聖蹟桜ヶ丘が舞台となる、同じジブリの「耳をすませば」以来だと思う。



峠路探訪 アプトの道の起点

アプトの道は、かつて横川駅から軽井沢駅間を結んでいた信越本線の一部で、登山鉄道の一種である「アプト式鉄道」の跡地を巡る、往復約4時間のお手軽なウォーキングトレイルコースだ。
横川駅を出て碓氷峠鉄道文化むらへ向かうと、すぐ脇にアプトの道の起点がある。
終点は熊ノ平駅で、途中碓氷湖を経由し、あの「めがね橋」の上を歩くことになる。



何度目だ、おぎのやの「峠の釜めし」

ハイキング開始の前に、やはり腹ごしらえはかかせない。
横川付近で腹ごしらえといえば、おぎのやの「峠の釜めし」に限る。

No.1駅弁 横川の「峠の釜めし」-群馬に生まれてよかった!と実感できる数少ない名物

横川駅前の道路を挟んだ向かいにあるおぎのやのドライブインは、平日の昼下がりだというのに激混みしていた。
ああ、夏休みか。TUBEか。



この日は営業していなかった麻苧茶屋(あさおぢゃや)の前を素通り。
営業中の折にはこの木陰の下で一服してみたいものだ。



金鳥、キンチョール、ダイヤ学生服、日の出桜学生服のホーロー広告看板

アプトの道から少し脇にそれ、碓氷峠の関所跡へ向かうとある路上にて、昭和ノスタルジーなホーローの広告看板群を発見した。
金鳥、キンチョール、ダイヤ学生服、そして初めて見る日の出桜学生服の看板があった。


碓氷峠の関所跡

上毛かるた「う」の札でもお馴染み「碓氷峠の関所跡」。
ここでは真田幸貫の家来・座間百人という人が碓氷峠関所の役人に提出したという通行手形の写しがもらえた。

前略、アプトの道の上より

アプトの道の上より。
遠くの真っ青な空に浮かぶあの白い雲が「風立ちぬ」のポスターのビジュアルを連想させなくもない。
こうして見ると普通の田舎道に線路が走っているようだが、実は右も左も山に囲まれており、「熊出没注意」の看板も立っているほどの山合である。
万全を期すタイプの人ならば、熊鈴を持って行った方がいいだろう。
前方に見える上信越自動車道の碓氷橋の下をくぐり抜けると急に雲行きが怪しくなり、雨がぽつぽつ降ってきた。



傘をさそうか迷っているところに、トロッコ列車のシェルパくんが旧丸山変電所方向からやってきた。
小降りの雨の中、急いでカメラを構えたものの、思いのほかゆっくりやってきたので吹き出してしまった。
夏休みなので列車は子どもたちであふれており、その中の一人が少し照れくさそうにこちらに手を振ってきたが、私はぼーっと見送るだけだった。
この日の最高気温は35度。
暑さで頭がやられていたのか、手を振っている相手は自分じゃないだろうと判断して振り返さなかったが、ふと周囲には自分以外誰一人いないことを思い出し、しまった!と思ったがもう遅かった。
トロッコ列車はのろのろと私の前を通りすぎて行ってしまった。
ずいぶんぼんやりしていたものだ。



天気雨のような奇妙な陽気のなか、国指定重要文化財のレンガ造りが美しい旧丸山変電所に到着。
写真を見ると完全に晴れているようだが、カメラのこちら側は鈍曇りだった。
ここは日本海と太平洋の中央分水嶺となる峠で、気象の変化が非常に激しい場所なのだ、ということを思い知らされる。
そういう気象条件の影響なのか、先日の「峠の湯」の火災ではなかなか鎮火しなかったらしい。


旧丸山変電所の機械室の建物

 

丸山変電所にある二つの建物の内、機械室の方の内部の様子。
どうやら補修中のようだ。
緑の木漏れ日が溢れて美しい。
入口にはしっかり鍵がかかっていたが、このように補修されているということは、いつか内部が一般公開される日が来るのだろうか? 

建物の前にある立て看板の説明によると、変電所の建物は「蓄電池室」とこちらの「機械室」の二つで構成されており、蓄電池充電中は水素と有害物質の硫酸雲霧が大量に発生するので、換気のためにこのような大きな窓や引き戸が必要だったのだそうだ。




シェルパくん用の「まるやま駅」案内看板。
とはいえシェルパくんは「ぶんかむら駅」から「とうげのゆ駅」を往復するだけで、この「まるやま駅」には停車はしないらしい。


時間の都合でこの日は旧丸山変電所までのハイクで終了した。
続きは近日、必ずや。

そして完結編へ。
↓↓↓
アプトの道巡り完結編。トンネルを抜けるとそこは…

風立ちぬ - 堀辰雄

この日のおみやげ。
桔梗屋の信玄餅、野沢菜漬け。

2013年8月2日金曜日

「風立ちぬ」で碓氷峠に思いを馳せまくる

風立ちぬ、
今は秋。


紅葉越しのおじさんの背中 伊香保・河鹿橋にて


我々世代かその上の世代なら「風立ちぬ」とくれば「今は秋」と相場は決まっている。
作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一のゴールデンコンビに加え、歌い手に世紀のアイドル・松田聖子を迎えた1980年代を彩る珠玉の名曲だ。

風立ちぬ - 松田聖子

 さて、今回の本題ははっぴいえんどやシュガー・ベイブや多羅尾伴内ではないので、松本隆と大瀧詠一の話は切り上げる。

R.I.P. 大瀧詠一(2013年12月31日更新)

A LONG VACATION - 大滝詠一


 本題はジブリアニメ「風立ちぬ」で見た「碓氷峠」(うすいとうげ)に関する話だ。
劇中、都合三回ほど碓氷峠に思いを馳せるシーンがあった。


碓氷峠鉄道文化むら D51 96 

碓氷峠鉄道文化むらにて、お座敷列車「榛名」



まず一つ目は、帽子が飛ぶ箇所と、白いパラソルが飛ぶ箇所だった。
主人公・堀越二郎とヒロインの里見菜穂子が出会う列車の場面で二郎の帽子が飛び、軽井沢で再会する場面では白いパラソルが飛ぶ。
そこで西條八十の「ぼくの帽子」の詩を思い出さずにはいられなかった。
「ぼくの帽子」は角川映画「人間の証明」にも登場する物語の重要な鍵となる詩だ。
詩の中で「ぼく」は、碓氷から霧積(きりづみ)へ行く道で渓谷に落ちてしまった僕の麦わら帽子はどうなったのでしょう、と母に問いかける。
ママ〜 Do you remember♪ (人間の証明のテーマ)

また二郎は劇中「風」という詩の訳(誰が風を見たでしょう〜)を口にする。
その訳詩者は西條八十その人である。
やはりあの帽子のシーンおよびパラソルが飛ぶシーンは「ぼくの帽子」にオマージュを捧げているに違いない、と思った。


鉄道文化むらで見た、最も美しい列車

 二つ目は、ドイツのユンカース社を視察するシーンで登場した航空機のボディを見たときだった。
 メタリックに輝くボディを見た主人公は「美しい…」と感嘆したが、私も同じことを思った。
そして碓氷峠鉄道文化むらで見た、施設内でも最も美しいと感じたあの列車のことを思い出した。

家に帰って鉄道文化むらで撮った写真を漁って見てみて、あらビックリ。

EF3020は三菱重工製

最も美しい列車「EF 3020」は三菱重工製だった。
二郎が勤め、戦時中ユンカース社の爆撃機をライセンス製造していたのが三菱重工だ。
どおりであの航空機に似ていたわけだ。




碓氷峠第三橋梁(めがね橋)

三つ目は、二郎が軽井沢休暇へ向かう道中、碓氷峠の「めがね橋」の上を列車が走っていくシーンだった。

長野新幹線開通にともなって廃線になってしまったが、昔は東京から軽井沢へ向かうには横川駅を経由して碓氷峠を越える信越本線を使う以外なかった。
信越本線の高崎発の終点は横川駅だが、以前は横川から軽井沢駅まで繋がっていて、新潟の直江津駅まで行くことができた。
今は横川駅から軽井沢駅まではバスでのアクセスのみとなっている。
バスの通称は「めがねバス」といい、バス車中からめがね橋を見ることができる。

廃線の一部が今「アプトの道」という名称の遊歩道として整備され、廃線跡を歩くことができる。
もちろんあの「めがね橋」の上も歩行可能だ。

何番目かの橋梁。その左に「アプトの道」への階段が見える




私はエンディングテーマの「ひこうき雲」の余韻(ストーリーとのリンク具合に驚嘆したが)もそこそこに、


「そうだ!碓氷アプトの道へ行こう!」


と思わずにはいられなかった。
だが連日の雨模様のため、いまだにアプトの道ハイキングには行けておらず今日に至る。
梅雨よ、早く終わってくれ!

風立ちぬ - 堀辰雄

しかも躊躇している間に、アプトの道途上にある「峠の湯」が火事により焼失してしまったという非常に残念なニュースが飛び込んできた。

上毛新聞より


アプトの道ハイキングの際には是非立ち寄りたいと思っていた場所だけに、非常に残念な思いだ。

「峠の湯」の関係者の方には心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い再建をお祈り致します。

(後日、旧丸山変電所まで行ってきました。→ 前略、アプトの道の上より

■関連記事