2013年9月25日水曜日

至仏山、ソロ登山

鳩待峠から山の鼻へ向かう木道にて。落ち葉の黄色から秋の訪れを感じる。
2013年9月11日午前9時49分。
鳩待峠から山ノ鼻へ向かう木道にて。落ち葉の黄色から秋の訪れを感じる。

至仏山で初ソロ山行を決行。

先日「夏が来れば思い出す♪」でおなじみ、遥かな尾瀬・至仏山(しぶつさん)でソロ登頂を果たしてきた。
登頂してからすでに二週間たった今もまだ軽い興奮状態が続いていて、尾瀬への恋しさ愛おしさが止まらず、日常生活に支障が出ている可能性も否めない。
興奮状態を少しでもおさめるため、ソロ山行の話をして発散しておきたい。
ソロ登山や尾瀬に興味のある人は、しばしの間お付き合い願いたい。




戸倉バス停の和式トイレにペットボトルホルダーを落とす


2013年9月11日 7時8分 沼田駅着
関東側から尾瀬に入山する場合、東京から直通の高速バスもあるが、我が実家は群馬なので、まずは在来線のJR上越線沼田駅まで行き、バスで尾瀬戸倉を目指すことになる。
(新幹線の上毛高原駅から尾瀬へのバス便は非常に少ない)
至仏山登山なら戸倉からバスに乗り、鳩待峠からアクセスするのが最短だ。
尾瀬沼を周遊するなら、戸倉の先にある「大清水」からの尾瀬入りが良いだろう。

この日は完全なる曇天に途中何度も引き返そうかと思ったが、天気予報サイトを見ると、正午ごろに晴れのマークがついているので、それを信じて天狗の郷・沼田までやってきた。

正面から見た天狗の面
沼田には昔「天狗ランド」という遊園地があってな。


7時20分 尾瀬・片品・丸沼方面行きバス発車

沼田駅前から鳩待峠バス連絡所(尾瀬戸倉)行きのバスに乗車する。
車中では沼田高や尾瀬高の高校生たちに囲まれてしまい、いささか恥ずかしい。
「通学中の学生たちに紛れてバスに乗る気恥ずかしさに耐えること」
これが平日登山ならではの心得の一つだ。
群大付属小の子どもたちに紛れてバスに揺られた赤城山登山しかり。

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8時49分 バス連絡所(尾瀬戸倉)着

巨大な天狗の面や、日光白根登山(酷い風雨のため1時間半ほど歩いて中止)の帰りに寄った老神温泉、片品渓谷の「吹割の滝」を横目に見ながら戸倉に到着。
乗り換えの鳩待峠行き乗合バス発車時間は8時55分だ。
若干時間があるのでバス停のトイレに寄ったのだが、和式便器に我が愛おしのペットボトルホルダー(コロンビアのキノコ柄)を落としてしまい、ほんのり、どんよりした。
だが「水洗でよかった!ボットンじゃなくてよかった!」と気持ちを切り替えた。

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9時15分ごろ 鳩待峠(標高1,591m)着

時刻表の予定よりも早めに鳩待峠に到着。
まずは山ノ鼻まで行って天気の具合を見て、至仏山登山か、牛首、ヨッピ橋などの尾瀬ヶ原散策かを判断しよう。
そう思い、山ノ鼻へ向かう道を探し当てると、休憩もそこそこに出発した。


鳩待峠を出発。いざ、山ノ鼻へ!


鳩待峠登山口の登山者カウンター

9時18分 登山スタート

登山口の登山者カウンターを通って山ノ鼻へと向った。
おなじみの「クマに注意」の注意書きを発見。
山ノ鼻では近年熊の姿をよく見かけるようになった、という事前情報を入手していたので、あまり衝撃はない。



山ノ鼻までの木道その1

9時49分 ゆるやかな下りの木道

鳩待峠からキャンプ場やビジターセンターがある山ノ鼻への道中は、ゆるやかな下り坂が続く。
ということは、鳩待峠から至仏山山頂までのピストンより、山ノ鼻を経由する登山道は少しきつくなる、ということだ(192m分、登りが増える)。
なるほど。


山ノ鼻までの木道その2

山ノ鼻までの木道その3

クマ除けの鐘

9時53分 クマ除けの鐘を鳴らす

鳩待峠から山ノ鼻への道中に見つけた熊に人の存在を知らせる鐘。
カラーーーン…
と辺りに気持ちよく響く良い音がした。


川上川脇の湿地帯その1

川上川脇の湿地帯その2

9時54分 川上川脇の湿地帯

湿地帯を横切る。

上から読んでも下から読んでも川上川

10時4分 上から読んでも下から読んでも「川上川」

鳩待峠から山ノ鼻への道にほぼ並走している一級河川・川上川。
上から読んでも下から読んでも川上川。

山小屋やキャンプ場や避難小屋もある「山ノ鼻」は賑やか

 

山ノ鼻キャンプ場

10時7分 山ノ鼻(標高1,399m)着

尾瀬ヶ原の入口、「山ノ鼻」に到着。
昼間は人通りも多いので、賑やかそうなキャンプ場だった。
少し落ち着かない気がしないでもないが、寂しい思いをしなくていいかもしれない。

山ノ鼻ビジターセンター

山ノ鼻ビジターセンター前

ビジターセンター近くにある大きくてキレイなトイレ内には、荷物置き場もあり、非常に便利で使い勝手の良いトイレだった。
トイレ入口には料金ポストがあるので、トイレ利用時は忘れずに百円玉を投函しよう。

時間があればビジターセンターで尾瀬や至仏山特有の生物や歴史について事前学習しておきたかったが、今回はスルー。
次の機会に山ノ鼻に訪れることがあれば是非入っておきたい施設だ。


赤いテントが点在する山ノ鼻キャンプ場

山ノ鼻にはキャンプ場やビジターセンターの他、いくつかの山小屋や批難小屋まであり、悪天候の平日とはいえ道行く人の姿も多く、活気にあふれていた。
鳩待峠から下り坂を1時間程度なので、テントを担いで来るのもさほど苦ではなさそうだ。
次に尾瀬散策をする機会があれば、ぜひ山ノ鼻でテント泊してみたいと思った。


山ノ鼻テント場利用時は至仏山荘で受付

テント場利用の場合は至仏山荘で受け付け、だそう。


水道や調理台もある自炊場

キャンプ場の自炊場

野菜を切ったりするのに便利そうな調理台を備えた自炊場あり。
こんな山中で水道が使えるなんて、非常に有り難い環境だと思う。


避難小屋もある

左に見える吹きさらしの小屋が避難小屋だ。
例えば最も混雑するミズバショウシーズン中の6月に、道迷いなどで残念にも予定が狂ってしまい、最終バスに間に合わず、テント装備の持参もなく、山小屋も満員…などという非常時には大変有り難い存在かもしれない。

公衆トイレの裏手にあったテラスベンチで「えいようかん」とお茶を補給して、尾瀬植物研究見本園方面へと向かった。


パサパサの行動食ばかりじゃ喉も乾く。そんな時は「えいようかん」に決まりだぜ!


尾瀬植物研究見本園入口

10時29分 尾瀬植物研究見本園入口

植物研究見本園近くにて。ここから山頂までは3時間。
ハイキングコースとも重なる木道の途上から至仏山方面をのぞむ。
至仏山の右側が雲間からうっすらのぞいている。

尾瀬植物研究見本園入口から山ノ鼻方面

山ノ鼻方面へ振り返ってみても雲しか見えない。
ここで自問自答する。

「山頂から湿原は見えるかな?」
「今はまだ微妙な天気だけど、天気予報では正午ごろに晴れるとかなんとか」
「最終バスは何時だったっけ?」
「行きの乗合バスの運転手さんが16時半って言ってた(※9月14日〜10月14日までの最終バスは17時10分)
「今から6時間後か…急げば1時間ぐらいは休憩できるかな?」
「やってやれないこともないね」
「行けるか?」
「うん。行っちゃおう!」

という自問自答を経て、至仏山登山は決行されることとなった。
この判断が正しかったかどうかは後ほど判明する。

ガスの中の至仏山


雨水が流れる登山道

11時3分 雨水がしみて流れる登山道を行く

山ノ鼻から歩き始めて約30分。
雨天というほどではない曇天の中、霧雨が降ったり止んだりを繰り返す。
登山道にはチョロチョロと雨水が流れていた。

テラスベンチでくつろぐ山ガールのバックに尾瀬の湿原

至仏山に登りはじめて約45分。
テラスベンチに座って休憩する山ガールたちに挨拶をして先を急ぐ。
山ノ鼻からの登山ルートは植生保護のためなのか登りオンリーで下り禁止となっているが、厳密には鎖場のある地点までは引き返してもいいようなことが公式の協会サイトのどこかに書いてあった。
山頂まで行かなければ下ってもOK、ということらしい。
だがこの時はそういう事情を知らず、ガールたちが全く登ってくる気配がなかったので「大丈夫かな?」「あのペースで日が落ちるまでに下山できるのかな?」などと余計な心配をしていた。

振り返れば、湿原と燧ヶ岳が見え……


遥か彼方に尾瀬湿原が

尾瀬の湿原地帯を振り返る。
遥か彼方に湿原が……見える……ような。見えないような。


蛇紋岩植物

11時26分 特殊な蛇紋岩植物の数々

蛇紋岩のはざまにきれいな紫色をした可憐な花が咲いていた。
黄色い花も咲いていた。
花の名前はわからない。
いつかビジターセンターで確認したいと思う。


尾瀬ヶ原の湿原その1

尾瀬ヶ原の湿原その2

11時30分 眼下に広がる湿原地帯

うっすら湿原が見えてきた。
ガスの向こうには、本当なら燧ヶ岳方面が見渡せるはずだった。
燧ヶ岳はあの辺りだろうか?


霧雨に濡れた蛇紋岩

ただでさえ滑る蛇紋岩(じゃもんがん)は、霧雨に濡れてさらに滑りやすくなっていた。


てっぺんがなかなか見えない

ガスの中の登山道

11時40分 いまだガスの中

あとどれだけ歩けば山頂なのか全くわからないほど、登山中はずーっとガスっていた。
ガスが多いと目標が見えないので、やはりモチベーションは下がる。

山ノ鼻と至仏山頂上との中間地点

11時49分 中間地点

風雨や日焼けで劣化が激しい「高低差828mの中間地点」の但し書き。
ここまで1時間15分ほど時間はかかったが、それほど危険な箇所もなく、安心して登ることができた。

クライマーズハイのまま至仏山〜小至仏山へ


急勾配の登山道

なかなかの急勾配が続く。
中間地点から頂上までは鎖場がいくつかあり、ストックをしまったり出したりするのに少々手間取ってしまった。
焦って岩場でスネを打ちつけたが、痛さはほとんど感じなかった。
これが俗に言う「クライマーズハイ」というものだろうか。
軽い興奮状態にあると痛みを感じにくくなるらしいが、登山でこの状態が続くと結構怖い。
身体は疲れていても頭は元気なので、正常な判断を下すのが難しくなる。
結局この日、家に着いてからも興奮状態がなかなかおさまらず、早朝5時起きで疲労困憊しているにもかかわらず深夜1時ぐらいまで夜ふかししてしまった。
クライマーズハイ、恐るべし。


谷川岳登山前の必読本

至仏山頂上の標高は2,281m

13時19分 至仏山(2,281m)頂上へ

中間地点からちょうど1時間半で至仏山山頂に到着。
山ノ鼻から標高差828mの道を2時間50分かけて登ってきた。
頂上でゆったり休憩するために少々急ぎ目でやって来たのだが、見事なまでのガス具合だった。



至仏山頂上の山座同定

山座同定を確認し、ガスで見えない山々や湿原、尾瀬ヶ原、尾瀬沼などにしばし思いをはせタイム。

至仏山頂上の山座同定その2

ここまで視界不良だと食欲も失せる。
ジップロックに入れた行動食のチーズ味プリッツェルの袋を開けて食べはじめたが、霧雨が濃くなってきたので早々に下山することにした。

巨大な蛇紋岩の塊(至仏山頂上)

13時47分 至仏山と小至仏山の間で

小至仏山頂までの道中、至仏山方向を振り返る。
険しい蛇紋岩の塊に風格を感じる。

この辺りで霧雨が小雨になってきたので、レインウェアの上着を取り出して装着し、ザックの脇にしまったストックを取り出した。
雨が降ると登山中の作業が増えて余計な時間がかかるし、そこらじゅうに泥汚れがつくので大変だ。
しかも今回のタイムスケジュールはかなりキツキツなので、このような細かい作業一つ一つがわずらわしく感じることもあった。

一人だと無茶なスケジュールを組んでも誰からも文句は言われないが、時間の余裕がないと焦ってしまい、事故にもつながりかねない。
今後のソロ登山のスケジュールは余裕を持ってのぞもう!
そう心に刻んだ。

悪天候時の頂上付近は「道迷い」に要注意!


小至仏山頂上

14時23分 小至仏山(2,162m)頂上へ

あまりのガスの濃さにビビりながらもなんとか小至仏山の山頂に到着。
道迷いの恐怖がつきまとう中、目印となるロープやテープなどを探り探り、慎重に歩を進めた。


出来たてホヤホヤの木道の上を歩く

14時34分 作りたてホヤホヤの木道の上を歩く

木道の階段が見え始め、ようやく道迷いの恐怖から開放された。
しばらく下っていくと、下の方からモーター音とともに機械臭が漂ってきた。
作業員の方々が真新しい木道を作っているところに遭遇した。
こんな場所で作業中の方々の仕事現場に立ち会えるとは幸運だ。
記念に「H25」の焼き印がついた作りたての木道と、トレッキングシューズの先っぽを撮影してみた。


14時40分ごろ 父子の登山者とすれ違う

この日初めて鳩待峠からピストン中の親子に遭遇した。

父親らしき人「至仏山の頂上はまだですか?」
私「う、うーん…全然まだまだですね!」
息子らしき人「え!そうなんですか!?」
私「は、はい。 頑張ってください!」
父子「はーい」

尾瀬の木道と指

14時54分
恒例の、尾瀬の木道と“指”。

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休憩0時間で尾瀬を発つ

 

尾瀬最後の一枚

尾瀬での最後の一枚。
ここからさらに笹が生い茂る窪地の道を競歩のごとく駆け抜けて、16時ちょうどに鳩待峠に到着し、休む間もなく最終バス1本前の乗合タクシーに飛び乗った。
最終の16時半の乗合バスではなく16時出発の乗合タクシー便に乗ると、戸倉から沼田駅まで乗り換え無しのバス便に間に合うのだ。
本当は鳩待峠でアイスクリームでも食べたかったし、コーラかアイスコーヒーでも飲みたかった。
でも鎌田バス停で乗り換えするのがかったるかった。
だからアイスもコーラもコーヒーも我慢した。
結局、逃げるようにして尾瀬をあとにした。

戸倉から鳩待峠まではバス・タクシーともに片道900円


鎌田バス停付近

途中の鎌田バス停。時間帯によってはバスの乗り換えをする場所だ。
帰りのバスで寝てしまうかもしれない。そんな気がしていたのだが、アドレナリンの分泌が止まっていないのか、バス乗車中に眠気が襲って来ることはなかった。
全身筋肉痛でとくに足が非常に重かったが、目だけはギンギンに冴えていた。

天狗の郷・沼田で1時間足止め(ダイヤ遅延なし)


沼田駅ホームの巨大天狗のお面


誤算だったのは、沼田駅での上り列車の待ち時間が1時間もあったことだった。
しかも時間を潰せるような手ごろな店が駅前にはないのだ。
仕方がないので駅前のベンチに座り、本当は山頂で食べるはずだったおにぎりを食べて時間を潰した。

写真は沼田駅プラットホームにあった巨大な天狗のお面だ。
沼田には天狗伝説があるらしい。
行きと帰りのバスの車中からもっと巨大な天狗のお面を2度見かけたのだが、残念ながら写真に収めることはできなかった。

さよなら、天狗。
さよなら、沼田。

今回の登山ルート&タイムスケジュール図


至仏山日帰り登山のルート&タイムスケジュール

汚い字で恐縮だが、今回の山ノ鼻からの登山ルート(鳩待峠→山ノ鼻→至仏山→鳩待峠)とタイムと注意ポイントを書き出してみたので、これから至仏山に登りたい人はぜひご参照を。

秋のオンシーズンと数日ずれていたので最終バスの時間も早く、なおかつ山ノ鼻を経由する回り道の登山だったので、相当無理なスケジューリングになってしまった。
オンシーズン(〜10月14日)で鳩待峠からのピストン登山なら、もっと余裕をもってのぞめるはずだ。
高山植物をたっぷり愛でたり、鳩待峠で花豆ソフトクリームでも食べてまったり過ごしてほしい。

さよなら尾瀬

さよなら尾瀬。またいつか。

などと言いつつも、Facebookで尾瀬の草紅葉の写真を見ていたら、また行きたくなってしまった。

やっぱりまた行くぞ、尾瀬!

 ■一年後の尾瀬で再びソロ登山シリーズ


■初ソロ登山にあたって購入した「くまモン」の熊鈴



今までハイキングや低山登山はもちろん、谷川岳などでも No Bell でやってきた。
しかし単独行で熊に会ったら、よりパニックになりそうな気がするので、万が一に備えて熊鈴を買っておこうと思った。
そこで以前から気になっていた、くまモンの熊鈴を手に入れることにした。
ワンタッチで消音できる「森の鈴」シリーズのくまモンバージョンだ。
トイレや山頂、山小屋での休憩中など、消音したいタイミングは頻繁に訪れる。
「森の鈴」はちょこっと引っ張ればすぐ消音できる優れものだ。
ザックの横に取り付けやすいカラビナ付きなのも便利だと思う。


通常の状態。凛とした心地の良い音がする。



カチっと音がするまで引っ張ると、このように消音状態となる。便利!

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