郷土の名所を織り込んだ上毛かるたの「や」の札でお馴染みの「吾妻渓」(あがつまきょう)。
かるたには大胆にも大分県の名勝・耶馬溪(やばけい)をしのぐ景色だとうたわれている。
しかしその四分の一は、あの八ッ場(やんば)ダムの底に沈むという。
「もうすぐダムの底に沈む温泉……」
このキャッチフレーズは、吾妻渓谷近くにある川原湯温泉に付けられたもので、温泉地に立つ看板などにも用いられているらしいが、「もうすぐ」と言われ続けて早5、60年たつことは若い世代の群馬県民にもあまり知られてはいない。
記憶にも新しいと思うが、2009年衆院選選挙で掲げられた民主党マニフェストには「八ッ場ダム建設中止」があった。
しかしマニフェストが実行されなかったのは周知の通りだ。
長きに渡った八ッ場ダム計画は、1967年の着工から紆余曲折の50年弱を経て、2015年にようやく終焉を迎えるという。
吾妻渓谷や川原湯温泉は、その時々の政治に翻弄されてきた悲劇の舞台といえる。
沈まないかもしれないけれど、沈むかもしれない。
そもそも凌ぐと言われる名勝「耶馬渓」を知らないけれど、群馬に帰ってきたからには、あの吾妻渓はいつか見ておかなければならない。
そんな義務感にも近い気持ちから、幻となるかもしれない景色を見に、吾妻渓谷に行ってきた。
吾妻渓谷周辺には遊歩道が整備されているので周遊するにはもってこいだ。
上の写真は吾妻渓谷にかかるいくつかの橋の一つ、鹿飛橋だ。
このあたりからも渓谷を眺めることができるらしいが、緑が濃すぎて岩場の様子がよく見えなかった。
この一帯は「八丁暗がり」という名称が付いているが、確かに見晴らしはあまりよくない。
訪れる季節を間違えたのかもしれない。
そんな思いがよぎる。
しかしこの吾妻渓谷が、いつ、どの辺が、沈んでしまうかもわからなかった。
だから思いつきで来ざるを得なかったのだ。
鹿飛橋から、国指定名勝「八丁暗がり」を望む。
狭くなった渓谷に倒木が架かっているのが見えた。
吾妻川の水が白っぽく見えるのは、強酸性の水質を中和するためのダム「品木ダム」から石灰を流しているためなのだろうか。
鹿飛橋から。逆側の吾妻渓。
渓谷の幅はどこも狭い。
吾妻川沿いの停車スペース近くから見下ろした吾妻峡。
先ほどの八丁暗がりよりは明るく見通せるが、やはり緑が深い。
紅葉のシーズンにもう一度見てみたいと思った。
見れるかどうかわからないけれど……
滝見橋。
橋の向こうから、幻の光が差す。ようにも見えた。
滝見橋は川原湯温泉駅から600m。
滝見橋から渓谷を見下ろす。
川面に映る木漏れ日が優しく光る。
滝見橋から。八ッ場ダムサイトの片鱗が見える。
本当に「もうすぐダムの底」となる時が迫って来ているようだ。
滝見橋から見た滝の逆側の風景。
ダムサイトが完成した暁にはダムの底に沈んで移設される予定の吾妻線と、建設中の八ッ場大橋が向こうに見えた。
民主党マニフェストの頓挫を経て、十中八九、幻となることが約束されてしまった川原湯温泉駅の駅舎と建設中の八ッ場大橋。
橋脚の上の方にオレンジ色のラインがあり、満水時にはラインまで水が貯められるようだ。
紆余曲折を経て、いよいよダムに沈んでしまうことは今や決定的となってしまった。
そんな事実を思い知らされるような風景だ。
しかし、「もうすぐダムの底に沈む」の「もうすぐ」が50余年も伸びるとは、一体誰が予想できたというのだろう。
この風景を、心の眼にしかと焼き付けようと思う。
帰りに今年オープンしたばかりの道の駅「八ッ場ふるさと館」に寄る。
同施設内には川原湯のダム工事に向けて掘られた新たな源泉の一つである「林温泉かたくりの湯」が引かれた足湯がある。
加温、循環濾過なしの源泉掛け流しだが、75.5℃と高温のため加水あり。硫黄臭がしっかりするいいお湯だった。
足湯場からは八ッ場大橋と、あの丸岩(日本百名山12座入り。穴場もたっぷりの登山ガイドブック「群馬の山歩き130選」)も望むことができてお得な気分になった。
かるたには大胆にも大分県の名勝・耶馬溪(やばけい)をしのぐ景色だとうたわれている。
しかしその四分の一は、あの八ッ場(やんば)ダムの底に沈むという。
耶馬渓を本当にしのぐのか?緑生い茂る吾妻渓谷
「もうすぐダムの底に沈む温泉……」
このキャッチフレーズは、吾妻渓谷近くにある川原湯温泉に付けられたもので、温泉地に立つ看板などにも用いられているらしいが、「もうすぐ」と言われ続けて早5、60年たつことは若い世代の群馬県民にもあまり知られてはいない。
記憶にも新しいと思うが、2009年衆院選選挙で掲げられた民主党マニフェストには「八ッ場ダム建設中止」があった。
しかしマニフェストが実行されなかったのは周知の通りだ。
長きに渡った八ッ場ダム計画は、1967年の着工から紆余曲折の50年弱を経て、2015年にようやく終焉を迎えるという。
吾妻渓谷や川原湯温泉は、その時々の政治に翻弄されてきた悲劇の舞台といえる。
沈まないかもしれないけれど、沈むかもしれない。
そもそも凌ぐと言われる名勝「耶馬渓」を知らないけれど、群馬に帰ってきたからには、あの吾妻渓はいつか見ておかなければならない。
そんな義務感にも近い気持ちから、幻となるかもしれない景色を見に、吾妻渓谷に行ってきた。
吾妻渓谷周辺には遊歩道が整備されているので周遊するにはもってこいだ。
上の写真は吾妻渓谷にかかるいくつかの橋の一つ、鹿飛橋だ。
このあたりからも渓谷を眺めることができるらしいが、緑が濃すぎて岩場の様子がよく見えなかった。
この一帯は「八丁暗がり」という名称が付いているが、確かに見晴らしはあまりよくない。
訪れる季節を間違えたのかもしれない。
そんな思いがよぎる。
しかしこの吾妻渓谷が、いつ、どの辺が、沈んでしまうかもわからなかった。
だから思いつきで来ざるを得なかったのだ。
鹿飛橋から、国指定名勝「八丁暗がり」を望む。
狭くなった渓谷に倒木が架かっているのが見えた。
吾妻川の水が白っぽく見えるのは、強酸性の水質を中和するためのダム「品木ダム」から石灰を流しているためなのだろうか。
鹿飛橋から。逆側の吾妻渓。
渓谷の幅はどこも狭い。
吾妻川沿いの停車スペース近くから見下ろした吾妻峡。
先ほどの八丁暗がりよりは明るく見通せるが、やはり緑が深い。
紅葉のシーズンにもう一度見てみたいと思った。
見れるかどうかわからないけれど……
滝見橋。
橋の向こうから、幻の光が差す。ようにも見えた。
滝見橋は川原湯温泉駅から600m。
滝見橋から渓谷を見下ろす。
川面に映る木漏れ日が優しく光る。
滝見橋から。八ッ場ダムサイトの片鱗が見える。
本当に「もうすぐダムの底」となる時が迫って来ているようだ。
滝見橋から見た滝の逆側の風景。
ダムサイトが完成した暁にはダムの底に沈んで移設される予定の吾妻線と、建設中の八ッ場大橋が向こうに見えた。
民主党マニフェストの頓挫を経て、十中八九、幻となることが約束されてしまった川原湯温泉駅の駅舎と建設中の八ッ場大橋。
橋脚の上の方にオレンジ色のラインがあり、満水時にはラインまで水が貯められるようだ。
紆余曲折を経て、いよいよダムに沈んでしまうことは今や決定的となってしまった。
そんな事実を思い知らされるような風景だ。
しかし、「もうすぐダムの底に沈む」の「もうすぐ」が50余年も伸びるとは、一体誰が予想できたというのだろう。
この風景を、心の眼にしかと焼き付けようと思う。
帰りに今年オープンしたばかりの道の駅「八ッ場ふるさと館」に寄る。
八ッ場ダムの完成模型図
同施設内には川原湯のダム工事に向けて掘られた新たな源泉の一つである「林温泉かたくりの湯」が引かれた足湯がある。
加温、循環濾過なしの源泉掛け流しだが、75.5℃と高温のため加水あり。硫黄臭がしっかりするいいお湯だった。
足湯場からは八ッ場大橋と、あの丸岩(日本百名山12座入り。穴場もたっぷりの登山ガイドブック「群馬の山歩き130選」)も望むことができてお得な気分になった。
来年の夏に行ってみたいと思います。まだ写真にあるような景色を見ることは可能でしょうか?
返信削除匿名さん、こんにちは。
返信削除この記事を書いたあとに、完成時期が4年延期されたことをニュースで知りました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20131120-OYT8T01370.htm
完成時期は2019年ということなので、来年夏ならば全然大丈夫だと思います。
ぜひ幻の風景を見に行ってみてください。